きもの男子通信

普段着とコスプレの間

お世話になっている渋谷のテーラーへ、ウールの着物で伺いました。

着ているのは生まれて初めて仕立てた着物。素材はウールです。

浅草のヒロヤさんで、反物、仕立て代含めて、多分3万円~4万円くらいだったと思う。
着物ってこんなに安くできるんだって、びっくりしました。
着物については、「安い=ダメなもの」という先入観があったけれど、全然そんなことはないとわかった。洋服とおなじです。

2007年発行の雑誌の七緒のウール特集を読んで、ヒロヤさんに行ったので、買ったのは多分その頃ですね。

その時、「普段着の着物」というものを初めて見たんだと思います。

この号の七緒で、ヒロヤさんの他にも、下駄屋さんとか、帯源さんとか、その他色々な浅草のお店を知りました。この号を読めば、どこに行けばちゃんとした普段着が手に入るか、わかった。

「七緒」は大好きだったけど、あまりにもたくさんありすぎて、ほとんど処分しましたが、この号は大事にとってあります。

という、思い出深い着物なわけです。

これが普通のコーディネート。


お店にあったハンチングとステッキを合わせてみました。


井伏鱒二みたい?

今度はソフト帽で。


一気にコスプレ感が!

でも、当時は身の回りにあった洋品を合わせてるわけだから、自然なことだっんだと思います。

今、身の回りにあるものを合わせるのもいいかもね。

とするとなんだろ。

この間、長着と羽織に、キャップを被ってる人の写真をネットで見たけど、いつもキャップを被ってる人だと、面白いかも。「あ、あの人、着物でもキャップ被ってるんだ」って感じで。
ハンチングも洋服のときも被ってる人なら「説得力」があるとき思う。

自分は着物のとき、キセルとか持っちゃうより、ハイライトの箱とかポーンと袖のなかに入りちゃう方がかっこいいと思う。(いつもキセルを使っているのなら別です。)

あとはなんだろう?

あんまり思いつかないけど、何時も自分が持ってるものを身につけると、コスプレじゃなくて「今の着物」って感じがすると思います。

なので日頃から、今あるもので、「着物にと使えそう」って思うものを探しておくといいかもです。

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着物と「普通」でありたいという欲望

オンライン版のGQに載っていた、河毛俊作さんのエッセイ「”普通”でありたいという欲望」、とても面白かった。

自分がなんとなく感じていたことが言語化された感じです。

河毛さんは、本当におしゃれな人。著書「一枚の白いシャツ」は、河毛さんのストイックな男性ファッション観と、その実践のための具体的なアドバイスが載った素敵な「実用書」でした。


以下、「普通でありたいという欲望」の超要約です。
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近代化というのは”普通の人々”を創造するということでは。(江戸時代、士農工商という身分制度が存在したが、あるクラスが「普通」という意識はなかったのでは。)
明治時代になって職種を横断して”中産階級”というものが誕生。

普通というのは新しい美意識を生んだ。
たとえば、「人からじろじろ見られるようでは良い趣味とは言えない」というボー・ブランメルの登場。
私達が良い趣味だと思うものは、服であれ食器であれ家具であれ、大抵は普通のもの。普通とは”過剰”でないこと。
勿論過剰でなければ良いというものではないし、普通のものでも良いものと”つまらないもの”もある。

”良い”普通のものの条件とは何か?

適正な価格であるのが最低条件。そうなると多くの人が手にすることになる。たとえば、車なら、自分が運転しているのと同じ車に街で何度もすれちがうと、少しだけ嬉しい気持ちになれるのが普通の良いものである条件。フォルクスワーゲン・ビートル、ミニなど。
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うーん。これを読んで「普通に」おしゃれな男の人が着物にあんまり参入してこない理由がわかったような気がした。

「人からじろじろ見られるようでは良い趣味とは言えない」という美意識の人は着物を着るのを躊躇するんだよね。

そして、「人に見られると嬉しい」とか、「ルールはどうでもいい」、「モテたい」、「着物は普通じゃない自分を表現するためのツール」みたいな人の方が参入しやすい。

その結果、
「男性の着物=奇抜」みたいな印象が強まる→「普通」におしゃれな人はさらに敬遠→より奇抜に・・・
という悪循環に!

明治以降、男性の着物で紬が流行したのは、着物の世界にも近代の「普通でありたいという欲望」があったからだと思う。
当たり前だけど、昔の人の多くは、目立ちたいから着物を来てたわけじゃない。

私はこのブログの紹介文で、「ワードロープの一つとして、きものを普通っぽく着たいと思っています」といってますが、「着物だと注目されてうれしい」と正直に語っちゃう人をみると、自分の隠れた本性を見せられたようで、痛恥ずかしい気持ちに。

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「ロック」だけじゃない、ルミロックさんの2017浴衣ツアー

新宿伊勢丹で開催中のルミロックさんの浴衣の催し、「RumiRockゆかたピカレスクツアー」に行ってきました。

これまでの人気柄の他に新作も。

「ルミロックさんの浴衣って、ロックなんじゃないの?自分には難しいんじゃないの?」と思っていらっしゃる方もいると思いますが、ルミロックさんのもう一つのポイントは、「ロマンチック」、だと思う。
前に紹介した、「不思議の国のアリス」の柄とか。

新作にもありました、「ロマンチック」が!

今回のテーマは「親指姫」。


ヨーロッパの絵本のような柄が素敵です。
白と薄いブルーのストライプに白い顔料でペン画のように書かれているので、目立ち過ぎず、品がいい。


浴衣としてではなく、(襦袢を着て)着物としてきても、いいと思います。

そして、もう一つは、枡屋儀兵衛さんというメーカーの為に、デザインされたという浴衣。
(nonoというブランドです。http://www.kimono-factory.com)

大島紬の柄をモチーフにしていますが、拡大したり、他の模様との組み合わせたり、ほどよく様々なアレンジがされていて、とてもモダンな感じ。




こちらも着物としてきてもいいと思う。

私は、どちらかというと「浴衣は浴衣」って思う派なのですが、こちらは、なんというか、昭和で言うところのいわゆる「趣味の着物」(=フォーマルではなくて、ちょっと凝った外出着。大島紬はまさにそれだと思います。)としても着られる気がしました。

これまでは、「趣味の着物」というと紬、という感じだったですけど、これなら、もっと手軽な値段でそういう着物が楽しめるのでは、と思いました。

予定は以下の通り、

・5/31~6/6 銀座三越9階テラスコート(東京)
・6/14~20 伊勢丹新宿店7階(東京)
・6/30~7/3 名古屋エスプラナードギャラリー(愛知)

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竺仙さんの「男物きもの」

浴衣や江戸小紋で有名な竺仙さんのサイトに「男物きもの」というページができていました。
http://www.chikusen.co.jp/product/season/mens.php

読んでみると、一番最初に以下の文章が。
「昔から男物のきものはお召か紬の先染め(糸染)と決まっており後染(生地の上から柄を染めあげる)きものは芸人さんのお召しになるものと言われておりました。」

・・・って、竺仙さんは基本染物のお店なのでは。

そして、その後は、以下のように続いています、
「そこでこの度男性がお召しになっても派手さの無い渋味のある着物を染めあげてみました。」

サイトに紹介されている男物は江戸好みの渋いもので、竺仙さんとしては「満を持して男物を発表」ってことなんだと思うけど、売る立場の竺仙さんが、「後染めのきものは芸人さんのお召しになるもの言われておりました」とまでいうのを読むと、やっぱり「あー、やっぱり男で染の着物って難しいんだな」って思う人もいるのでは。

自分が作っているのに、男性に素直に染めの着物を勧められない、竺仙さんの不器用さというか正直さ!

江戸っ子は、大変です。

竺仙さんの染めの男もの、個人的には、紬の長着の上に羽織として着ると、いいのでは、と思います。 (素材は縮緬です。)

特に堅めの紬だと、お対にすると、ちょっと厚ぼったくなるので、羽織を染めの着物にするとちょうどいいのでは。羽織が柔らかくても下が堅いと、なんというか、あまりなよなよした感じにはならないと思います。

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能 友枝明世の会「三輪」神遊@国立能楽堂

能楽師、友枝明世(ともえだあきよ)さんがシテ(主役)をつとめるお能「三輪(みわ)」を観てきました。


明世さんは超人気、ということは前から聞いていたのですが、「きっとチケット取れないだろう」と思って、一度も行ったことがありませんでした。
ところが、今回公演の数週間前に事務所に電話してみると、チケットがほんの少し残っていたのでした。
良かった!

さて、お話は・・・

奈良の三輪山に住むお坊さんのところに、毎日仏様に供える木とお水を持ってくる女の人がいました。
ある日、その人がお坊さんに「夜寒いので衣をください」と頼みます。
お坊さんが、住まいを尋ねると、「三輪の山の麓の杉の木の立っているところです」といって消えてしまいます。
その後、村人がお坊さんに「三輪山の杉の神木にお坊さんの衣がかかっていた」と知らせにきます。
お坊さんが、そこに行ってみると杉の木の陰から三輪の神様(女神です)が現れ、三輪の神様の伝説を舞ったあと、今度は天照大御神の天岩戸のお話を舞います・・・

明世さんは、最初の謎の女性(前シテ)と後半の神様(後シテ)の役です。
前半は、お能にはよくありますが、なんというか、さみしげな感じ。
途中の登場する村人が登場するところは、狂言の人(人間国宝の山本東次郎さん)が演じているせいか、普通のお能よりもリアル(?)な感じがしました。
そして、いよいよ舞台に置かれた杉の木に見立てられた作り物(木の枠に布を掛けたもの)から神様が登場。
この神様は、女性のお面に烏帽子、白い単衣の狩衣に赤い大きな袴(大口)という姿・・・つまり男装なのです。
この姿が、清らかで美しい!
これまでの(色々不思議なことは起きていたが)現実の世界から、別の世界へ。

三輪の山の神様の伝説を舞っている時は「自然界の精霊」という感じです。
次に、天岩戸の舞いに移り、まずはアマノウズメとして神楽を踊ります。そして、橋懸かりを渡って、左端まで行くと左腕を挙げ袖を翻し(「翁の型」というのだそう。お能の「翁」の人形に良くあるポーズです)、さーっと舞台に戻ってきて、こんどは天照大御神になってさらに高次元の世界へ。

普通、舞台に神様が登場しても、なかなか本当に神様と思うのは難しい・・・というかほとんど無理だと思うけど、今回は「あ、神様がいる」と納得した。

それは、以前、御殿場の方に行ったとき、大きな富士山を見て、「日本が戦争に負けるはずがない」と思ったのと同じ感じ。それと同じように、「これは神様なんだ」と思った。理屈抜きってことです。

今まで、実は、「お能って、お能を習ってない人が見てもあまり面白くないんじゃないかな」と思ってた。
でも、今回の「三輪」はお能を全く知らない人が観ても「神様を見た」と思ったに違いない。

あと「神遊」(かみあそび)というのは、三輪の小書(こがき:各流に伝わる演出方法)の一つで、先ほどの装束や翁の型などは、それによるそうです。

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