きもの男子通信

嘉辰令月・・・一本のお軸がきっかけで知ったこと-雅楽、和漢朗詠集、紫式部日記まで

先日、「千秋万歳楽未央」というお軸を拝見しました。

「千秋万歳楽未央」というのは、
「嘉辰令月歓無極 万歳千秋楽未央」
という漢詩の一部だそう。

唐の太宗に仕えた文人、謝偃(しゃえん)の詩で、和漢朗詠集の「祝」の部に収められています。



嘉、令はどちらも「良い」「めでたい」という意味、辰というのは「日」のことなので、「嘉辰令月」は、めでたい月日、良い時節という意味。

この詩は、
「このめでたき良き日に、歓びは果てしない。万歳千秋を祝って楽しみは尽きることがない。」
という意味だそう。

「和漢朗詠集」は平安時代に朗詠されていた漢詩や和歌を集めたものですが、私は前から「朗詠」ってどんなものだったんだろう、「音」だから今はわからないのかなー、と思っていました。
ところが、なんとこの詩は、「嘉辰」という題で、今でも「朗詠」されているそうなのです。

YouTubeでも見れる!
https://youtu.be/z1Cmzh97pkY

平安時代には大変盛んだった朗詠は、中世には衰え、今残っているのは15曲だそう。(和漢朗詠集には漢詩590句、和歌220首が載っています。)

朗詠って雅楽なの?って思った人もいるかと思います。わたしもそう思いました。
もともとは室町家、綾小路家などの公家に伝えられていましたが、明治になって、宮内庁にできた雅楽局に移され、雅楽の一つとなったそうです。

こちらのサイトに雅楽の歴史がわかりやすく書いてあるので是非読んでみて。
http://iha-gagaku.com/history.html

紫式部日記にも、彰子中宮に皇子が生まれ、一条天皇が藤原道長の邸宅、土御門殿邸に行幸なさった時、「嘉辰」が朗詠される場面が出てきます。しかも朗詠しているのは、和漢朗詠集の撰者である藤原公任!

(原文)
左衛門督(藤原公任のこと)など、「万歳、千秋」と諸声に誦じて、主人の大殿、「あはれ、さきざきの行幸を、などて面目ありと思ひたまへけむ。かかりけることもはべりけるものを」と、酔ひ泣きしたまふ。さらなることなれど、御みづからもおぼし知るこそ、いとめでたけれ。

紫式部日記(の現代文訳)、初めて読みましたが、凄く面白い。OL作家紫式部の「職場日記」なの、です。「私、この仕事向いてないかも」「若い人と違ってわたしがこんなことすると勘違いと思われるんじゃ」「(宮中で)働いてるとすれてると思われそう」「あの人は嫌い」「あの人はイケてる」コンプレックスとプライドが混ざり合ってます。やはりそういう性格の人でないと文学は書けないのかも。
そして、和歌の返答が素早いのがおどろき。LINEの返しくらい早い。

お軸を見たことがきっかけで、色々調べてわかったのですが、以上全てGoogle検索です。時間もせいぜい30分くらい。

凄いよGoogle!

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普段着とコスプレの間

お世話になっている渋谷のテーラーへ、ウールの着物で伺いました。

着ているのは生まれて初めて仕立てた着物。素材はウールです。

浅草のヒロヤさんで、反物、仕立て代含めて、多分3万円~4万円くらいだったと思う。
着物ってこんなに安くできるんだって、びっくりしました。
着物については、「安い=ダメなもの」という先入観があったけれど、全然そんなことはないとわかった。洋服とおなじです。

2007年発行の雑誌の七緒のウール特集を読んで、ヒロヤさんに行ったので、買ったのは多分その頃ですね。

その時、「普段着の着物」というものを初めて見たんだと思います。

この号の七緒で、ヒロヤさんの他にも、下駄屋さんとか、帯源さんとか、その他色々な浅草のお店を知りました。この号を読めば、どこに行けばちゃんとした普段着が手に入るか、わかった。

「七緒」は大好きだったけど、あまりにもたくさんありすぎて、ほとんど処分しましたが、この号は大事にとってあります。

という、思い出深い着物なわけです。

これが普通のコーディネート。


お店にあったハンチングとステッキを合わせてみました。


井伏鱒二みたい?

今度はソフト帽で。


一気にコスプレ感が!

でも、当時は身の回りにあった洋品を合わせてるわけだから、自然なことだっんだと思います。

今、身の回りにあるものを合わせるのもいいかもね。

とするとなんだろ。

この間、長着と羽織に、キャップを被ってる人の写真をネットで見たけど、いつもキャップを被ってる人だと、面白いかも。「あ、あの人、着物でもキャップ被ってるんだ」って感じで。
ハンチングも洋服のときも被ってる人なら「説得力」があるとき思う。

自分は着物のとき、キセルとか持っちゃうより、ハイライトの箱とかポーンと袖のなかに入りちゃう方がかっこいいと思う。(いつもキセルを使っているのなら別です。)

あとはなんだろう?

あんまり思いつかないけど、何時も自分が持ってるものを身につけると、コスプレじゃなくて「今の着物」って感じがすると思います。

なので日頃から、今あるもので、「着物にと使えそう」って思うものを探しておくといいかもです。

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着物と「普通」でありたいという欲望

オンライン版のGQに載っていた、河毛俊作さんのエッセイ「”普通”でありたいという欲望」、とても面白かった。

自分がなんとなく感じていたことが言語化された感じです。

河毛さんは、本当におしゃれな人。著書「一枚の白いシャツ」は、河毛さんのストイックな男性ファッション観と、その実践のための具体的なアドバイスが載った素敵な「実用書」でした。


以下、「普通でありたいという欲望」の超要約です。
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近代化というのは”普通の人々”を創造するということでは。(江戸時代、士農工商という身分制度が存在したが、あるクラスが「普通」という意識はなかったのでは。)
明治時代になって職種を横断して”中産階級”というものが誕生。

普通というのは新しい美意識を生んだ。
たとえば、「人からじろじろ見られるようでは良い趣味とは言えない」というボー・ブランメルの登場。
私達が良い趣味だと思うものは、服であれ食器であれ家具であれ、大抵は普通のもの。普通とは”過剰”でないこと。
勿論過剰でなければ良いというものではないし、普通のものでも良いものと”つまらないもの”もある。

”良い”普通のものの条件とは何か?

適正な価格であるのが最低条件。そうなると多くの人が手にすることになる。たとえば、車なら、自分が運転しているのと同じ車に街で何度もすれちがうと、少しだけ嬉しい気持ちになれるのが普通の良いものである条件。フォルクスワーゲン・ビートル、ミニなど。
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うーん。これを読んで「普通に」おしゃれな男の人が着物にあんまり参入してこない理由がわかったような気がした。

「人からじろじろ見られるようでは良い趣味とは言えない」という美意識の人は着物を着るのを躊躇するんだよね。

そして、「人に見られると嬉しい」とか、「ルールはどうでもいい」、「モテたい」、「着物は普通じゃない自分を表現するためのツール」みたいな人の方が参入しやすい。

その結果、
「男性の着物=奇抜」みたいな印象が強まる→「普通」におしゃれな人はさらに敬遠→より奇抜に・・・
という悪循環に!

明治以降、男性の着物で紬が流行したのは、着物の世界にも近代の「普通でありたいという欲望」があったからだと思う。
当たり前だけど、昔の人の多くは、目立ちたいから着物を来てたわけじゃない。

私はこのブログの紹介文で、「ワードロープの一つとして、きものを普通っぽく着たいと思っています」といってますが、「着物だと注目されてうれしい」と正直に語っちゃう人をみると、自分の隠れた本性を見せられたようで、痛恥ずかしい気持ちに。

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「ロック」だけじゃない、ルミロックさんの2017浴衣ツアー

新宿伊勢丹で開催中のルミロックさんの浴衣の催し、「RumiRockゆかたピカレスクツアー」に行ってきました。

これまでの人気柄の他に新作も。

「ルミロックさんの浴衣って、ロックなんじゃないの?自分には難しいんじゃないの?」と思っていらっしゃる方もいると思いますが、ルミロックさんのもう一つのポイントは、「ロマンチック」、だと思う。
前に紹介した、「不思議の国のアリス」の柄とか。

新作にもありました、「ロマンチック」が!

今回のテーマは「親指姫」。


ヨーロッパの絵本のような柄が素敵です。
白と薄いブルーのストライプに白い顔料でペン画のように書かれているので、目立ち過ぎず、品がいい。


浴衣としてではなく、(襦袢を着て)着物としてきても、いいと思います。

そして、もう一つは、枡屋儀兵衛さんというメーカーの為に、デザインされたという浴衣。
(nonoというブランドです。http://www.kimono-factory.com)

大島紬の柄をモチーフにしていますが、拡大したり、他の模様との組み合わせたり、ほどよく様々なアレンジがされていて、とてもモダンな感じ。




こちらも着物としてきてもいいと思う。

私は、どちらかというと「浴衣は浴衣」って思う派なのですが、こちらは、なんというか、昭和で言うところのいわゆる「趣味の着物」(=フォーマルではなくて、ちょっと凝った外出着。大島紬はまさにそれだと思います。)としても着られる気がしました。

これまでは、「趣味の着物」というと紬、という感じだったですけど、これなら、もっと手軽な値段でそういう着物が楽しめるのでは、と思いました。

予定は以下の通り、

・5/31~6/6 銀座三越9階テラスコート(東京)
・6/14~20 伊勢丹新宿店7階(東京)
・6/30~7/3 名古屋エスプラナードギャラリー(愛知)

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竺仙さんの「男物きもの」

浴衣や江戸小紋で有名な竺仙さんのサイトに「男物きもの」というページができていました。
http://www.chikusen.co.jp/product/season/mens.php

読んでみると、一番最初に以下の文章が。
「昔から男物のきものはお召か紬の先染め(糸染)と決まっており後染(生地の上から柄を染めあげる)きものは芸人さんのお召しになるものと言われておりました。」

・・・って、竺仙さんは基本染物のお店なのでは。

そして、その後は、以下のように続いています、
「そこでこの度男性がお召しになっても派手さの無い渋味のある着物を染めあげてみました。」

サイトに紹介されている男物は江戸好みの渋いもので、竺仙さんとしては「満を持して男物を発表」ってことなんだと思うけど、売る立場の竺仙さんが、「後染めのきものは芸人さんのお召しになるもの言われておりました」とまでいうのを読むと、やっぱり「あー、やっぱり男で染の着物って難しいんだな」って思う人もいるのでは。

自分が作っているのに、男性に素直に染めの着物を勧められない、竺仙さんの不器用さというか正直さ!

江戸っ子は、大変です。

竺仙さんの染めの男もの、個人的には、紬の長着の上に羽織として着ると、いいのでは、と思います。 (素材は縮緬です。)

特に堅めの紬だと、お対にすると、ちょっと厚ぼったくなるので、羽織を染めの着物にするとちょうどいいのでは。羽織が柔らかくても下が堅いと、なんというか、あまりなよなよした感じにはならないと思います。

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